東京国立博物館 お正月のおすすめ3選
①千住博(せんじゅひろし)《ウォーターフォール・陽光》
お正月にふさわしい紅白の色彩で描かれた本作は、東京都出身の画家・千住博氏(1958年〜)による作品です。作家は長年「滝」をモチーフに描き続けてきました。勢いよく垂直に流れ落ちる滝と、水面近くでしっとりと広がる靄(もや)の対比が印象的です。
千住氏は1995年、ヴェネチア・ビエンナーレで東洋人として初めて名誉賞を受賞しました。身近な場所では、羽田空港第3ターミナル(国際線到着エリア)にも、青と白で彩られた壮大な滝の作品が展示されています。
②後藤貞行(ごとうさだゆき)《馬》
東京国立博物館の彫刻研究員・増田氏によると、後藤貞行は「馬の彫刻家」と呼ばれるほど、生涯で多くの馬の作品を残しています。「もともと陸軍の軍馬局などに勤務しながら石版画や写真を学び、のちに彫刻家へ転身した異色の経歴の持ち主です(註1)」。馬のためならどこへでも足を運び、熱心に観察を重ねたといいます。
彫刻を詳しく見てみましょう。なびく立髪が前方へ流れていることから、速度を上げて走っていた馬が急ブレーキをかけて立ち止まった瞬間を捉えていることがわかります。増田氏によると、高村光雲の制作をサポートした縁で、《老猿》の材木の余りを譲り受けて制作されたものだと推察されています。左足や頬の質感からは、筋肉のつき方まで徹底的に観察した作家の情熱が伝わってきます。

③長谷川等伯《松林図屏風》
長谷川等伯(1539〜1610年)は、能登(現在の石川県七尾市)生まれの絵師です。当時の七尾は、文化に造詣が深い畠山氏が統治しており、京都の文化人との交流が盛んな地でした。等伯は武士の家に生まれますが、のちに染色業を営む長谷川家の養子となり、絵師であった養父の影響を受けて画業を志したと考えられています。
等伯は能登にいる頃、仏画を描く絵師でした。しかし、転機は30代で訪れます。京都への進出です。当時、京都では豪華絢爛な画風の狩野派が御用絵師として活躍していましたが、等伯は実力と営業力で頭角を現していきます。
《松林図屏風》は、豊臣秀吉が天下を統一した頃に描かれた(註2)そうで、中国の禅僧画家である牧谿(もっけい)の水墨画に影響を受けています。薄い紙が使用されており、紙の継ぎ方にも違和感があることから、他の作品のための下書き(草稿)の可能性が高いとも指摘されています。
【鑑賞のポイント】 立つ位置を変えることで、見え方が劇的に変わります。遠くから眺めると、冬の冷んやりとした霧や靄に包まれた松林が浮かび上がり、中央奥には雪を頂いた山を確認できます。一方、近くに寄ってみると、迷いなく線が描かれており、迫力ある筆致に圧倒されます。専門家によると、「筆の穂先をいくつも重ねたもの、竹の先を細かく砕いたもの、あるいは藁(わら)を束ねたものを使ったと考えられている(註3)」そうです。
註1 増田政史「躍動をとらえた、馬の彫刻」東京国立博物館ニュースvol.783
註2 「松林図屏風」e国宝
註3 「松林図屏風」東京国立博物館ホームページ
【TIPS】東博ツアーをもっと楽しむ!予習に使えるデータベース3選
東京国立博物館ツアーの予習にぴったりな、無料のデータベースをご紹介します。 ぜひご活用ください。
①ColBase:国立文化財機構の所蔵品を横断的に検索可能
②文化遺産オンライン:全国の文化遺産を網羅した日本最大級のナビゲーション
③e国宝:国宝・重要文化財を高精細画像で解説