【この一点!】戦国武将の意外なこだわり?小早川秀秋の斬新な陣羽織
南蛮貿易で日本に入ってきた生地、羅紗(らしゃ)
現在、東博の2階・第16室に展示されているのは、16世紀の陣羽織。当時、栄えた南蛮貿易を通して日本に輸入された羅紗(らしゃ)、つまり、ウールで作られています。保温と撥水の両方の機能を兼ね備えた優れものです。
目の覚めるような赤色の生地に、漆黒の鎌。このコントラストが何とも美しいです。まず上部の襟元に目を向けると、牡丹の花と蕾のような刺繍が施されており、その細やかな技巧に目を見張ります。続いて中央の2つの鎌は、同じ型を用いて切り取られ、重ねられています。切ってはめ込む。その名の通り、「切嵌(きりばめ)」と呼ばれる技法です。注目したいのは、その鎌の持ち手の部分です。現代のハートマークによく似た、魔除けの模様「猪目(いのめ)」があしらわれており、戦国武将のこだわりに気づきます。
さらに、視線を下の裾(すそ)へと動かすと、中央から左右に向かって大きく切り開かれ、丸くカーブしている斬新な意匠が目を引きます。「鋭い刃物で世を切り開く」という意味が込められているのでしょうか。この野心的で大胆なデザインの陣羽織は、戦国武将・小早川秀秋の持ち物であったと伝えられています。
〈今回ご紹介した作品〉
作品名: 陣羽織 猩々緋羅紗地違鎌模様
よみがな: じんばおり しょうじょうひらしゃじちがいがまもよう
展示場所: 東京国立博物館 本館2階 16室(※2026年6月28日まで)
〈ミニ用語集〉
南蛮貿易 なんばんぼうえき trade with Europe around the 16th century
陣羽織 じんばおり samurai vest
羅紗 らしゃ woolen cloth
猩々緋 しょうじょうひ vivid red
違鎌 ちがいがま crossed sickles ※より大きな鎌はscythe
猪目 いのめ boar's eye motif
保温と撥水 heat retention and water repellency
大胆なデザイン bold design
出典:ColBase
参考資料:小山弓弦葉「重要文化財 陣羽織 猩々緋羅紗地違鎌模様 背に鎌、胸に祈り、陣羽織に込めた武将の願い」
〈編集後記〉
レポート記事がないときには、【この一点!】と題して、東博を中心に興味深い作品をお届けします。作品の前に立って話す場面を想定して、短くまとめます。